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魚鱗癬は、子供にどのように遺伝するか?

魚鱗癬は、子供にどのように遺伝するか?

先日、魚鱗癬の幼稚園児が、両親と当店に来ました。
遺伝について、良くわからないようなので、説明しました。

その時、気がつきましたが、遺伝の仕方や症状の発現については、意外に解りにくいのかも知れない、と感じました。

そこで、今回は、魚鱗癬の遺伝について、述べたいと思います。

魚鱗癬については、主に4つの遺伝方式に分けられています。
1、尋常性魚鱗癬   常染色体優性遺伝形式
2、伴性遺伝性尋常性魚鱗癬  劣性遺伝 男児のみ
3、水泡型先天性魚鱗癬様紅皮症
4、葉状魚鱗癬

このうち、最も多いのが、「尋常性魚鱗癬」ということになっています。これは、理論的には、男女とも同数、発現します。
それに次ぐのが、「伴性遺伝性尋常性魚鱗癬」 です。これは、X染色体上に、魚鱗癬の遺伝子があって、劣性遺伝であるので、ほぼ男子のみに発現します。女子の性染色体はXXですので、その二つのX染色体上に同じ遺伝子があれば、理論的には、女子にも発現します。しかし、確率的には限りなくゼロに近いので、女子にはなく、男子のみに発現するとしても良いでしょう。

水泡型先天性魚鱗癬様紅皮症と葉状魚鱗癬は、数が少ないので、今回は触れません。

英語や中国語の資料を見ると、尋常性魚鱗癬 が多く、 伴性遺伝性尋常性魚鱗癬は少ないとなっています。
しかし、日本や中国では、伴性遺伝性尋常性魚鱗癬が非常に多いような感じがします。
日本語や中国語のサイトでは、圧倒的に男性の魚鱗癬の患者が多いという、印象を受けます。
私が、魚鱗癬について関心を持って調べ始めたときには、これは、ほとんど男の患者ばかりで、女性の患者は、非常に少ないとの感じがしました。
中国は魚鱗癬の患者が、日本に比べて大変多く、しかも男性が多いようです。たまに、女性の患者が出てくると、女性の魚鱗症患者がいないこともないのだ、という感じです。
魚鱗癬についての、発症率、男女比などの正確な統計が、日本や中国ではないのか、あっても見たことがありません。

尋常性魚鱗癬が多く、 伴性遺伝性尋常性魚鱗癬は少ない、というのは、おそらく欧米でしょう。
日本や中国で、「尋常性魚鱗癬が多く、 伴性遺伝性尋常性魚鱗癬は少ない。」とされているのは、欧米のデーターをそのまま利用しているだけでしょう。
日本や中国では、魚鱗癬についての正確なデーターは、無いのでしょう。
日本や中国では、「伴性遺伝性尋常性魚鱗癬」が、(魚鱗癬の患者の中での比率)多いのではないかと思います。


「伴性遺伝性尋常性魚鱗癬」の遺伝について

先の幼稚園児のお子さん(男児)の両親の関心の一つは、その子の子供には、どう遺伝するかと言うことでした。
そのお子さん(男児)の、母方の従兄弟の男児には、魚鱗癬が出ています。従姉妹の女子には出ていません。
母方の親戚の男性に魚鱗癬の患者がいます。
以上のことから、このお子さんは、「伴性遺伝性尋常性魚鱗癬」であることが推定されます。これは、劣性遺伝です。
もし、「尋常性魚鱗癬(常染色体優性遺伝形式)」でしたら、親族の男女に一定の割合で、出ているはずです。


そのお子さん(男児)の子供は、魚鱗癬は出ない、と説明したら、安心したようです。
ただし、孫(男児)には、魚鱗癬がでる可能性はあります。そのお子さんの娘の子供(男児のみ)に、魚鱗癬が出ます。
まあ、(お母さんに)あなた方から見たらひ孫ですし、その頃には、魚鱗病の治療が出来るようになっているでしょうから、もうそこまで気にしなくて良いでしょう、とも説明しました。

伴性遺伝の魚鱗癬の遺伝について、画像で図示しましょう。
    
性染色体には、X染色体とY染色体との二種類があります。
X染色体が二つだと女性にあります。女性はXXと表現されます。
X染色体が1本、Y染色体が1本だと男性になります。男性はXYと表現されます。
仮に、魚鱗癬の遺伝子がないX染色体をXとし、魚鱗癬の遺伝子があるX染色体をX’とします。

伴性遺伝性尋常性魚鱗癬(X’Y)の男性の子供は、以下のような確率で子供が生まれます。
(おなじ遺伝型の魚鱗癬遺伝子を持つ女性と結婚する確率は、極めて少ないので、その場合は考えません。)

X'X(女)、X’X(女)、XY(男)、XY(男) 各25%
       なお、この図は昭和薬局で製作したものです。版権は当方にあります。
                                        禁無断使用
                なお、商用でなければ、患者さんなどは、自由にご利用ください。

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以上の様に、子供の世代は一人も魚鱗癬を発病しません。
男児(XY)は、魚鱗癬を発病しません。また、遺伝子もありません。したがって、その子孫は、全く魚鱗病にはなりません。
女児(X'X)は、魚鱗癬を発現しません。しかし、100%遺伝子を保有しています。
この女児の子供(幼稚園児から見たら孫の世代)には、魚鱗鮮は、上図の下半分のように遺伝していきます。
(おなじ遺伝型の魚鱗癬遺伝子を持つ男性と結婚する確率は、極めて少ないので、その場合は考えません。)

X'Y(男、魚鱗癬)、XY(男)、X'X(女、魚鱗癬は発現しないが、遺伝し保有)、XX(女)  各25%
以上のように、この女児の子供の内、50%の男児に魚鱗癬が遺伝し、発現します。
発現しなかった残りの50%の男児には、魚鱗癬の遺伝子はありません。
女児の100%には、魚鱗病は発現しません。ただし、50%の女児は、魚鱗癬の遺伝子の保有者になります。残りの50%は、魚鱗癬の遺伝子はありません。
しかし、遺伝子を保有しているか否かは、次の世代か、更に先の世代にならないと、分かりません。

優性遺伝と劣性遺伝について。
優性とか劣性とか、優劣を示すような言葉が使われていますが、人間の優劣を示すものではありません。
遺伝子は、両親から対(2つ)で受け継ぎます。
その時、一つでも発現するのを優性といい、二つそろわないと発現しないのを劣性といいます。
たとえば、目の色は、黒が優性で、青が劣性だそうです。
今回の「伴性遺伝性尋常性魚鱗癬」の遺伝子は、劣性遺伝子で、しかもX染色体にあるので、男児に出やすいことになります。

女児の性染色体は、XとXです。X染色体にあるので、そのうちの一つに遺伝子があっても、発現しません。二つのX染色体に、同じ伴性遺伝性尋常性魚鱗癬の遺伝子が無い限り、魚鱗病は発現しません。それで、女児には、伴性遺伝性尋常性魚鱗癬の魚鱗病がほとんどありません。
伴性遺伝性尋常性魚鱗癬は、
男児の性染色体は、XとYです。X染色体が1本しかないので、遺伝子があれば、劣性ではありますが、100% 魚鱗病が発現します。

優性遺伝劣性遺伝について、簡単に述べましたが、詳しく知りたい方は、他のサイトをご覧ください。

尋常性魚鱗癬(常染色体優性遺伝形式)について


「尋常性魚鱗癬」 の遺伝については、上記の「伴性遺伝性尋常性魚鱗癬」のように複雑ではありません。
遺伝子が、常染色体に一つでもあれば、魚鱗病が発現します。
しかも、男女の同数に発現します。
尋常性魚鱗癬の人の子供には、以下のように遺伝します。
(この場合も、同じ型の尋常性魚鱗癬の相手とは結婚しないとします。)
尋常性魚鱗癬の遺伝子をAとし、それに対応する遺伝子をaとします。
尋常性魚鱗癬の遺伝子の保有者をAaとし、非保有者(魚鱗癬病で無い人)をaaとします。
すると、生まれてくる子供は、
Aa (尋常性魚鱗癬の遺伝子の保有者) ×  aa(配偶者)
  の組み合わせ(夫婦)から、以下の遺伝子の組み合わせ、確率で、子供が生まれます。
Aa(男児、魚鱗癬)、aa(男児)、 Aa(女児、魚鱗癬) 、aa(女児)  各25%
となります。
尋常性魚鱗癬の遺伝について、画像で図示しましょう。
    なお、この図・画像は昭和薬局で製作したものです。版権は当方にあります。
                                       禁無断使用

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生まれてくる子供のうち、男女とも半数が魚鱗癬の遺伝子を持ち、魚鱗病を発現します。
魚鱗病を発現しなかった残りの半数の子供には、魚鱗癬の遺伝子はありません。
その子孫にも伝わることはありません。


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