江戸時代のパンデミック対策の薬
江戸時代のパンデミック対策の薬
2022.9
ここしばらく、武漢発の疫病に全世界が、悩まされていて、まだまだ、収束しそうにありません。
江戸時代にも、しばしば、今風に言うパンデミックが、起こりました。
悪質なインフルエンザや、麻疹などが、時々流行しました。やはり、中国やオランダなどから長崎の出島を通じて入ってきました。
江戸幕府も、その対策として、有る程度の効果のある、簡易な処方集を刊行・配布しました。
先日、享保年間の「時疫(じえき;今風に言うと、悪質なインフルエンザの流行)」対策の「救民薬方」を手にいれました。
なかなか、興味深い内容です。
いくつかを紹介します。
☆ 一 流行病で、熱があるのには、
蚯蚓(みみず)をよく洗って、土をよく除く。水で煎(せん)じて飲むとよい。よく、熱を冷ますものである。
その他の病(やまい)でも、熱があるもの、すべてに良い。蚯蚓の中でも頭の方に白い筋があるものは、更によく効くものである。
注:蚯蚓は、生薬名を地竜と言います。アースドラゴンですね。地竜のエキスは、現在でも、販売されています。古来より、解熱作用があるとされています。
☆ 一 流行病(はやりやまい:時疫)に罹患し、熱がつよく頭痛するには、
鶏卵を一つ、茶碗の内へ入れてかきまぜ、熱湯を二合を加える。そして、かきまぜ、一度に飲むと良い。その上に、夜着(よぎ)蒲団(ふとん)をかぶり、汗を出させると良い。
注:これは、卵酒の簡易な処方ですね。
☆ 一 時疫には、
葛の根と生姜を煎じ、毎日四五杯づつ飲むとよい。
訳者注:これは、葛根湯の簡易方であると言えよう。
葛の根=葛根と生姜は、葛根湯の成分です。
昨今の流行病(はやりやまい)である、コロナ肺炎にも、葛根湯を用いているのを、見たことがある。ただし、アセトアミフェンと一緒でしたが。
☆ 一 時疫にて、頭痛、寒気が軽くなったら
柴胡(さいこ)の根と生姜を煎じ用いると良い。これも、一日に四五杯づつ飲むとよい。
注:柴胡(さいこ)には、解熱作用もあります。柴胡と生姜は、柴胡桂枝湯の主成分です。柴胡桂枝湯は、胃腸症状を伴う風邪に効き目があります。また、現在発売されている同剤の効能には、・・・微熱・寒け・頭痛・吐き気などのあるものの・・・と記されています。
以上のは、あくまで、古書の内容の紹介と解説です。インフルエンザや、コロナ肺炎などに対しては、しかるべき機関で、指示を受けてください。
☆☆ここに挙げられた、「蚯蚓=地竜」、「葛根}「生姜(しょうきょう)」「柴胡」は、現在でも、多くの漢方薬に用いられています。
また、スペイン風邪が、我が国にも、流入し、多大な被害がありました。
スペイン風邪が流行(1918ー1920年)したとき、木村博明先生は、この処方を用いて、治療に当たったそうです。
そして、一人の死者も出さなかったそうです。