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夏の薬草  ボタン

夏の薬草  ボタン

ボタン

ボタンは、大きな美しい花を咲かせることで、古くから観賞用として日本に輸入され、広く庭に植えられています。
大きな花は、美しいだけではなく、不思議な存在感があります。
中国の古い小説には、しばしば「牡丹の精」が出てきます。当然、この世ならぬ美人です。
そういう話は、大変面白いものです。
また、牡丹の花は、梅の花と共に、中国の国花ともされています。
しかし、原産国ではない日本から、江戸時代に長崎の出島を通じて、世界に園芸植物として、広がりました。

牡丹の根の皮である牡丹皮(ボタンピ)は、現在でも、広く使われている生薬です。
特に、女性向けの漢方薬に多く使われています。
薬効としては、やや強い血流を良くする作用、鎮痛作用、鎮静作用があります。
婦人薬として、月経不順、生理痛、便秘に用います。
ただし、単独で使われることは、ほとんどありません。

伊沢一男先生「薬草カラー図鑑」より、
”古く、中国から渡来したが、日本に入ってきた年代は、奈良とも平安時代とも言い、はっきりしない。
「大和本草」(1708)では、ハツカグサを和名としてこれに牡丹をあてているが、正しくないようだ。
江戸時代から栽培が盛んになり、特に元禄のころには、園芸品種が数多く作り出された。
「紫陽三月記」(1691)という牡丹栽培の参考書や、牡丹観賞の手引書なども出版されて、かつてない牡丹ブームが起こっていた。
そのころ、ドイツ人ケンペルが出島のオランダの医者として日本に来て、この富貴、艶麗な牡丹の花木を初めてヨーロッパに紹介した。
幕末から明治にかけて、日本産の牡丹の苗は、ヨーロッパに輸出され、各地に広がった。
牡丹皮の成分は、配糖体のペオニフロリンを主とし、そのほかにペオノール、ペオノリット、ペオノサイドを含んでいる。
漢方処方としては、鎮痛、鎮静、消炎性駆瘀血、通経、排膿などに応用する。
婦人薬として月経不順・月経困難・便秘・痔疾に用いる。”
         
梅村甚太郎先生の「民間薬用植物」より、
◎牡丹皮をとり、陰干しにして、煎じて服用すれば、月経不順を治し、心臓を強健にする。
  随って、積血、吐血、鼻血にも効果があるという。
◎黄色い花の牡丹は、寒熱中風を治し、瘀血をサル。
  また青色の牡丹にも、同じような効果がある。仏頭青という品種が特に良い。
(注:先にボタンピは単独では用いない、としましたが、それは、イワユル正式の漢方でのことです。
 梅村先生のこの記述は、牡丹皮の単独での効能効果です。民間療法では、生薬は普通単味で用います。また、妊婦は、使ってはいけません。)

「薬草と毒薬」(梅原寛重先生著、有鱗堂書店、明治42年6月15日)という本には、“牡丹の花を砂糖漬けにする。”という記述があります。
さて、これを食べたのでしょうか?薬として用いたのでしょうか?

「病気を治す花療法」 (孫維良先生、片桐義子先生著)には、花の薬効が記載されています。
“牡丹の花の香りは、生理不順を調整し、血液循環をよくする働きがあり、生理痛も軽くする。”
  とあります。

牡丹の文献の初出は、「神農本草経」です。
牡丹:一名を鹿韭、一名を鼠姑という。味は辛で、性質は寒である。山や谷に生ずる。寒熱中風、驚癇邪氣を治す。五臓を安んじ、癰瘡を治す。

牡丹というと、多くの人にとっては、花でしょう。
しかし、漢方が好きな私にとっては、根っこの方が重要です。
「花より団子」ではなく、「花より根っこ」ですね。

さいたま  朝霞市、志木市、新座市、和光市で37年  漢方相談薬局埼玉県朝霞市朝志ヶ丘1-2-6-106  昭和薬局   薬剤師  鈴木 覚           TEL  048-473-7830  FAX 048-473-7332サイタマカンポウ ドット  コム     埼玉漢方ドットコムhttp://www.saitamakanpo.com/

夏の薬草 浮き草

夏の薬草 浮き草

浮き草は、夏の季語になっています。
浮き草は、淡水に浮かぶ草全体を指すこともありますが、季語の「浮き草」は、「浮き草」という名の水生植物でもあります。

浮き草というと、湖沼が思い浮かんで来ます。
山の避暑地というと、何となく湖や、池、沼が思い浮かびます。
そうして、そこには、浮き草が漂っている情景が浮かんできます。

また、浮き草は、浮萍(ふひょう)という漢名です。単に萍でも浮き草の意味です。

余談ですが、私は「萍(ヒョウ)」という字が好きです。
「萍」という字の入った成句に「萍水相逢」というのがあります。
この「萍水相逢(ひょうすいそうおう:ピンスイシャンヘン)」という言葉は、突然の出会い、予期せぬ出会いという意味です。なかなかしゃれた言葉だと思います。
昔の台湾の流行歌の中にも、この言葉がありました。

浮き草は、最古の本草書(薬草書)である、「神農本草経」に収載されています。
しかし、浮き草の薬用効果(薬効)について、記載している日本の薬草書は、意外と多くありません。

梅村甚太郎先生の「民間薬用植物志」には、以下のように薬効が記載されています。
●煎じて服用すればよく邪気を去り、痒瘡(かゆがさ)を止め、小便を利し、一切の風湿を治す。
●悪蛇に咬まれた時には、浮萍を搗くつぶして、其の汁をつけると良い。
●浮腫みがあって、小便が出渋って通せざるには、浮萍を日に乾し、粉にして一匁づつ、白湯にて服用すると良い。
●関西地方では、草瘡(クサガサ:植物によるかぶれ)に、浮萍をすり潰してつける。

「神農本草経」には、
水萍 :一名水華.味辛寒。生池澤。治暴熱身痒。下水氣。長鬚髮。止消渇。久服輕身。
    別名を水華(ミズのハナ)という。味は辛く、性質は寒である。池や沢に生育する。ひどい熱、体の痒みを治す。水気を下す(利尿作用)。髭や髪を長ぜしめる(養毛作用)。消渇を止める。久しく服すれば、身が軽くなる(仙人のように体が軽くなり、ふわふわと空を飛べるようになるという意味)。

さいたま  朝霞市、志木市、新座市、和光市で37年  漢方相談薬局埼玉県朝霞市朝志ヶ丘1-2-6-106  昭和薬局   薬剤師  鈴木 覚          TEL  048-473-7830  FAX 048-473-7332サイタマカンポウ ドット  コム     埼玉漢方ドットコムhttp://www.saitamakanpo.com/

ゲンチアナの薬効・薬用効果

ゲンチアナの薬効・薬用効果

ゲンチアナは、リンドウ科の植物です。
漢方では、近縁種であるリンドウの根及び根茎を竜胆(リュウタン)といい、苦味健胃薬です。苦味(くみ)とあるように、大変苦い薬です。
ゲンチアナも、実際になめてみると、一種独特の苦味があります。
苦い薬は、大抵胃腸薬です。これは、苦い生薬は、消化液の分泌を促すので、胃腸の状態が良くなります。


ゲンチアナは、日本で比較的多く使われている、西洋生薬・ハーブです。
所が、意外な事に、日本の薬草関係の書物には、ほとんど記載がありません。
西洋ハーブですから、中国の本草書にもありません。

ゲンチアナの薬草としての初出は、おそらくディオスコリデスの「ギリシャ本草(Materia Medica)」
でしょう。
“ゲンチアナ(Gentiana)の名称は、古代イリリアの王であるゲンチウス(Gentius)が、その薬効を発見したのに由来している。
ゲンチアナは、高山の峰や、日陰の湿った場所に生える。
根の、ティースプーン二杯分は、体を温め、強壮作用がある。
その汁のティースプーン一杯は、高所から落下、ヘルニア、ケイレンに良い。
その汁は、肝臓病と胃炎に良い。
トロイ人は、アロイティス(Aloitis)、ローマ人はゲンチアナ(Gentiana)と呼んでいる。”
 注:ここに引用した内容は、もう2千年ほど昔の記述ですので、ご注意ください。

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現代では、フランスの薬草療法家である、モーリス・メッセゲ先生は、「メッセゲ氏の薬草療法」で、以下のように記述しています。

“昔の人(ディオスコリデス))は、
ゲンチアナを使ってヘビの咬傷を治すと、記述しているが、信じられない。
肝臓・腸の病気を治療したりするのは、大いにありそうなことだ。
いろいろな虫を下したり、としているが、これは確かだ。
消化機能を全体的に刺激したり、としているが、これも確かだ。
その解熱作用・利尿作用を活用していたが、これはもう保証つきだ。

現代の人間は、
ゲンチアナのこういった薬効の他に、以下のような効果も付け加えた。
唾液の分泌を促進する効果。それゆえ、非常な食欲増進効果を生む。
さらに、体組織を全体的に強壮化する効果(苦味のある植物全体に共通する効能である)がある。
白血球数を増加させる効果(私たちの体をいろいろな病原菌から守る)がある。”

現在の日本では、もっぱら、胃腸薬、健胃剤として、用いられていますが、意外と、広範囲の効能効果があるようです。
メッセゲ先生は、苦味のある植物全体に強壮効果がある、と述べていますが、漢方的には、苦味のある生薬は、苦味健胃薬です。
胃が悪けれが、食べたものが十分に消化吸収できずに、不健康になります。
胃が良くなって、消化吸収が良くなれば、健康になれます。
そう考えれば、メッセゲ先生の言うように、苦味のある植物全体に強壮効果がある、というのも、正に当を得ています。


朝霞の漢方  昭和薬局
薬剤師  鈴木 覚

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