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明治大正における魚鱗癬についての記述  その5 

明治大正における魚鱗癬についての記述  その5                                                                 2014.6

資料の出所はすべて、「国会図書館の近代デジタルライブラリー」からです。
これらは、本は、普通の書物であって、国会図書館にあり、電子化された物です。
ネット上の根拠のないものとか、何らかの意図を持った怪しい文書ではではありません。
「国会図書館の近代デジタルライブラリー」は、誰でも自由にアクセスできます。興味あるかたは、そちらも参照すると良いでしょう。
ただし、古いものですから、内容の正確性には欠けます。
今回は、「皮膚病学」寺田織尾先生著より
( 中には、有害と思われる治療法もありますので、ご注意ください。)

皮膚病学 寺田織尾先生著[他]   金原医籍、明治32年11月
(注:ローマ字のつづりは、原文の通りとした。また、用語のあるものは、原文のままとした。)

   皮膚ノ進行性栄養障害

    (甲) 表皮ノ栄養障害

       魚鱗癬 Ichthyosis

魚鱗癬は、幼少期に発症する。異常なる角質変性により、過多の鱗屑(りんせつ)が堆積し、これを発する。そうして、本病は病症上、数期に区別される。

単純鱗癬 Ichthyosis symplex は、その最も軽症なるものである。本症にあっては、四肢の伸展側に微細な糠粃(こうひ:ヌカ)状の落屑(らくせつ)を呈する。特に、下肢にくらべれば上肢において高度であるとしている。この落屑は、産毛の周囲に集積していて、尖端に鱗屑を被っている数多くの小結節よりなる。その小結節を毛苔癬  Lichan pilaris と云う。これは、全く健全な成人に於ては、しばしばその上膞(じょうはく)の伸展側に見られることがある。そうではあるが、魚鱗癬にあっては、すでにこれを幼少時に発症して大きく広がっているものである。これによって、当該部の皮膚は、ざらざらとなり、皮脂および汗の分泌が減退する。そのために乾燥し、屈曲面の柔らかい皮膚と、全くその状態が異なってくる。この期においては、その局所の症状は、痒疹に大いに似ている。ただ、痒疹にあっては、下肢が、伸展側上肢におけるよりも強く侵されることを以って、魚鱗癬とは違うことが判断される。

魚鱗癬の増進期に至っては、普通の皮膚面は、はなはだしくザラザラとなるのが見られる。即ち、四肢の伸展側、特に関節部においては、大いなる厚い鱗屑(りんせつ)でもって覆われ、真珠様の光沢を放っている。その状態は、大いに魚鱗癬に類似している。これを燦爛性鱗癬(さんらんせいりんせん) Ichthyosis nitida と云う。  
その患部は、徐々に健全の皮膚に移行する。そうして各鱗片は、中央において堅く附着し、その周縁は隆起している。試しに、手で患部を撫でれば、ざらざらとした不快の感覚を呈する。そして、本症にあっては、鱗屑疹(りんせつしん)のような、鱗屑が強く赤疹上に堆積するのが見られない。また、鱗屑疹においては、その大きな広がりは、赤疹を除き、概して各小板、即ち堆積物が常に健全な皮膚によって分画されている。しかし、魚鱗癬にあっては、連続した大きな部分が侵害を蒙っているのが見られる。このように侵襲された上膊(じょうはく)は、その状態が、あたかも蛇皮のようである。それ故、この症を名づけて蛇皮状魚鱗癬 Ichthyosis serpentina と云う。この状態は、鱗片の汚緑褐色に変ずるによって、さらに強固となり、注意して洗浄しても、依然として、その色が残留している。この色は、不潔物の蓄積したものだけではなく、また色素によって生ずるものである。その原因は、プラシュコー氏が正確に唱えたように、遊走細胞より輸送された色素によってではなく、角質の固有色によって来るものである。
病勢が増進してきた場合においては、この現象は、特に膝部おいて強く見られる。この鱗癬性皮膚は、また時として胸部、手掌(しゅしょう:手の平)及び足蹠(そくせき:足裏)に発現し、これに加えるに、しばしば足蹠にのみ発現することがある。顔面及び頭部に発生する時には、多くの糠粃状(こうひじょう)の落屑、いわゆる 顔面および頭部糠粃疹を発し、毛髪の発育が減退される。汗腺は慨して侵害を受け、時として全く閉止し、汗が出なくなる。そうして魚鱗癬の蔓延が高度に達しても、開節の屈曲面には、全く魚鱗癬は発現しない。ヨーゼフ氏は、例外として、ある女性の魚鱗癬患者が、関節の屈曲面にのみ局発して、その他の皮膚は、正常であったものを、見たことがあると云う。

このように、病状の多くは瀰漫性(びまんせい)を呈し、しばしば左右対象に広がるが、他の場合においては、純粋に極限的であることがある。
魚鱗癬の最高度なるものは、異常な角質変性により、先の尖った棘状のものを形成する。その状態は、豪猪(やまあらし)に似ていて豪猪癬 Ichthyosis hystrix と云う。
 
上記の症状に合わせて、あるいは全く単独の身体の限定した部分に、帽針頭大、もしくはやや大きい汚穢灰色の角錐状の物が出来ていることがある。この乳頭状皮膚肥厚は、時として強く発育して、疣贅(ゆうぜい:いぼ)と同じ様になるに至る。そうして、多くは神経の行路に応じて見られるがゆえに、これを神経痣 Neuennaevus または、疣状痣 あるいは神経性乳頭腫 Naevus verrucosus od. neuropathische Papilom と称する。本症においては、局所炎によって亜急性の多くの表皮が落屑するのを、カポジーが初めて記載した。

魚鱗癬は、通常 生後の第二年 或いは、それ以後に発症し、青春期の初期の頃に至って、その極度に達するものであって、罹患した子供の生誕の際には、通常健全である。しかし、一二の場合においては、先天性魚鱗癬に罹って、産まれた時点で、既に魚鱗癬を発症しているものがある。
 このような嬰児で、その症状の最も著しいは、顔面である。眼瞼外反症および口唇の外反が見られる。全身の皮膚は、汚穢黄色の鱗屑(りんせつ)で覆われていて、かつまた萎縮している。カスパリーは、一度、下肢において、マバラな鱗屑の下部に固着した輪状の厚い鱗片があって、そのために下腿及び足部は、あたかも股に衣服をつけて、股が狭くなったようになっているのを、実際に見たと云う。
 
皮膚の魚鱗癬の症状は、時として非常に顕著に発現することがある。本病に罹患した、すべての胎児は、概して早産するが、必ずしも生後すぐに死亡するとは限らない。生後の一ニ年間、苦しんで生存していることもある。これは、皮膚疾患の重症なることによってである。
ここに記載した高度の症から最軽度に至るまで、数種の階級がある。この先天性魚鱗癬と通常の魚鱗癬との間に、また各区別がある。しかし、もう一方には、産まれた時点では、正常な皮膚であったが、一、二週間を過ぎて、始めて先天性魚鱗癬の症状を発現した患児を、実際に目にしたことがある(ラング)。
要するに、先天性魚鱗癬と初生児汎発性皮脂過漏症とは、別のものであって、厳格に区別をしなければならない。

診断
診断は、少しも困難ではない。時として、或いは鱗屑疹、若くは紅色苔癬と区別しにくいこともあるだろう。しかし、身体の一定部分において、その病状に特異なる所の初期発疹のあるのに注目するとよい。

原因
原因については、私には、詳細が判らない。遺伝が、大いに、必ず関係している。
ただし、カスパリの観察によって見られるように、血族間の結婚が、果たして本病の発生を助けるか否かは、まだわかっていない。

解剖学的検査
解剖的検査からは、病変の本性について、十分には判っていない。私の見る所では、角質の過度の発生にある。それゆえ、角質層は強く発育しており、特に豪猪癬に於いては、そうである。
カボジーは、細網細胞が角質層に移行することが急激なのに注目したが、豪猪癬におては特に著しいのを観察した。たとえば、その先鋭なる疣状のものにあっては、強い角質層に加え、なお強く活発に発生した細網細胞がみられる。しかし、豪猪癬に在っては、これに反して、薄くて潤いに乏しく、且つ発育緩慢であって、ほとんど萎縮した細網細胞上に異常な角質層の存在が見られる。そうして、外皮は肥厚し、汗腺は、しばしば肥大することがある。本病に就いて、レロイル氏からの、いわゆる神経変性による、との報告が、正しいかどうかは、またわかっていない。                            
ベーレンスブルングとヒマルハンドは、化学的検査を行ったが、鱗屑は、灰分に富み、中には、鉄及び珪酸を含有することを発見した。         

経過  
すべて、魚鱗癬は終身持続して発現する。それ故、その経過は甚だ緩慢である。しかし、慨して、甚だしく患者を悩ませることはない。
痒疹 及び数多くの疥癬に由来する湿疹の多くは、大きく広がることはない。不快の感覚は、おおむね皮膚が乾燥していることによって引き起こされるが、本病においては、しばしば発汗過多を起こすことがあると云う。
又、一方より魚鱗癬には一種の潜伏的な状態になることがある。即ち、角質層が脱落して、皮膚は、一時的に正常となることがあるが、すぐに元の様な状態に戻る。


予後
予後は、不良である。何となれば、本病は全治しないからである。しかし、十分治療をすれば、よく、目立った諸症状を除去し、もしくは、少なくとも、我慢できるほどにはできる。

療法
(注:ここに挙げられている治療法は、今から100年以上昔のものです。
   応用すべきではありません。
   中には、砒石=砒素を含む鉱物のように、明らかに危険なものがあります。
この部分を含む全文は、あくまで、参考だけにしてください。)
療法としては、第一に、魚鱗癬の集積物を除去することが重要である。即ち軽度の症状の患者には、毎日温浴するようにさせ、1日二回下記の軟膏を塗布させるとよい。

処方  βーナフトール   5.0  適量のアルコールに溶解する
    黄色ワセリン  1,000

処方  レゾルシン      2.0      
    グリセリン軟膏   100.0     研和
  
処方  サリチル酸      2.0     
 黄色ワセリン   100.0  研和


又、ザーフェルドが愛用した硫黄及びラノリンの化合物である柔らかい「チラニン」を代わりに用いるのも良い。このような方法を以って、数ヶ月間治療すれば、単純鱗癬及び燦爛性鱗癬等の諸症状は、著しく改善するであろう。しかしながら、もし薬用を中止すれば、また本病の症状が再発するので、また新たにこの治療法をなわなければならない。
長いこと、世間で用いられた砒石(ひせき:猛毒である砒素を含む鉱物)は、以上の治療法と併せて用いてもよい。
又、脂肪に富んだ、或いは流動レゾルシン石鹸を用いると、良い効果がある。
そうして、限定的な部分にある魚鱗癬の集積物は、30~35パーセントのサリチル石鹸を用いて除去すると良い。
豪猪癬は、手術的方法によってのみ処置できる。この目的には、クロロホルム麻酔を施こし、スパーテル(鏡匙)を以って、角質屑を除去するとよい。


朝霞市、志木市、新座市、和光市  で39年   薬剤師 鈴木 覚
昭和薬局  埼玉県朝霞市朝志ヶ丘1-2-6-106
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